好きだからキスして何が悪い?
そう考えると、めちゃくちゃ胸がキュンとして、鼓動が速くなる。

ひとりときめく私をよそに、立ち上がってズボンについたホコリを軽くはたく彼。

私もつられて、ズレた眼鏡を直しながら立ち上がると、ほぼ無意識にこんなことを口にしていた。


「あの、ソウくん、ですよね!?」


文ちゃんには難易度高くて無理だとか言ったけど、勢いで聞いちゃった……!

私を見下ろし、彼は眉をひそめて怪訝そうな顔をする。


「は?」

「商店街の本屋さんで働いてますよね? 私、昨日そこで……」


そこまで言ったものの、はっとして口をつぐんだ。

こんな地味な私なんかのこと、彼が覚えてるわけないじゃん!

しかも私のこの言い方、なんだか芸能人に会ったファンみたいじゃない? 息巻いちゃって恥ずかしい……。


急に黙り込んで俯くと、彼がふっと鼻で笑うのが聞こえた。

少し顔を上げると、ソウくんは意地悪っぽく目を細めて、わずかに口角を上げている。


「あぁ、あのオタクっぽい本買ってた腐女子ね」

「フ、ジョシ……!?」


思わぬ返答に、私は目が点になる。

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