好きだからキスして何が悪い?
「それで遅れたんだ……。ならそう言ってくれればよかったのに」

「楽しんでるお前らに、水差すようなこと言っちゃ悪いかと思って」


あぁ……ったく、何でこんな嫌味っぽいことを……。

でも、心にもないことを言ってないと、本当の気持ちが溢れそうなんだ。

“この恋を諦めたくない”って想いが──。


「祭りなんて、最初からそんな乗り気じゃなかったんだ。パープルのことがあってテンションも下がってたし、そんな調子で妄想女に付き合うなんて疲れるだけ……」


──ダンッ!

テーブルに衝撃が走り、グラスの中で液体が揺れている。

俺は口を閉ざし、テーブルに片手をつく琉依を見上げる。


「……音哉くんがいなくなってから、すっかり根性ナシになったね」


感情豊かな彼から表情が消え、氷点下の冷たい声で言い放たれた。

その言葉に、俺の身体も凍らされたように動けなくなる。


「地味な格好なんかして、パープルから……過去から逃げてたかと思えば、今度は恋愛からも逃げてる。いつまでそんな奏でいるつもりだよ?」


次第に怒りを露わにする琉依は、眉根を寄せて俺に訴える。

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