好きだからキスして何が悪い?
「琉依ならパープルとは関わりないし、お前のことも一番わかってくれるだろ? ……つっても、アメリカ行ってりゃ意味なかっただろうけど」


ははっと軽く笑う音哉を見ていると、徐々に力が抜けていく。


「普通に俺に教えてくれりゃよかったのに……」

「それだと俺が弟離れできねーだろ」


口を尖らせる俺に、彼はまた笑って冗談っぽく言った。

弟離れって……それを言ったら、俺はいまだに兄離れできてない気もするんだけど。

俺も苦笑しながら、ふと気付いて音哉を見やる。


「じゃ、もしかして今日は、琉依から連絡を……?」


小さく頷いた音哉は、あの頃よく見せていた、口角を上げた少し意地悪っぽい表情で言う。


「最近、ずいぶんヘタレてるらしいじゃん」


……ガックリと肩を落とす俺。

琉依から聞いたんだな。

パープルのことか、菜乃のことか……そのどっちもか。


「アンタがいなくなってから、俺はすっかり腰抜けだよ」

「人のせいにすんじゃねぇ」

「冷てーな……」


厳しい返しに、すねたように呟くと、音哉はまた楽しそうに笑った。

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