好きだからキスして何が悪い?
考える俺に、音哉は優しい笑みを向ける。


「今の場所で、結構うまくやれてんだ、俺。母親も今は元気になったし。だから、高校は卒業できなかったけど、あの時の選択も後悔してない。もちろん、奏をかばったこともな」

「……本当に?」


念のため聞くと、音哉は「当たり前だろ」と笑い飛ばした。


「奏も、奏の思うままに進めよ。お前の周りにいる奴らは、少し好き勝手やったくらいじゃ離れていかねぇと思うけど?
俺だって自分勝手に去っていったけど、こうやって待っててくれるヤツがいるんだし」

「ぅわ」


わしゃわしゃと頭を撫で回され、ボサボサの髪の隙間から目が合うと、ふたりでぷっと吹き出した。

音哉の前では、なんか自分がすげぇ子供になった気分になるよ。

おかげで心に掛かっていたもやが、すっきりと晴れてきた。


頭には琉依や菜乃の顔が思い浮かぶ。

どっちも無くしたくないと思う俺はワガママだよな、ほんと。

でも、まだはっきり勝負が決まったわけじゃないのに、俺は何もせずに負けを認めようとしてたんだ。

もうこんなカッコ悪すぎる自分とも決別しねぇと──。

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