好きだからキスして何が悪い?
「そ、そんな褒められましても……」


顔を逸らして俯く私に、琉依くんはきっぱりと言う。


「本当のことだよ? で、これはきっと奏も同じように思ってるはず」


──ドキン。

突然出された如月くんの名前に、つい敏感に反応してしまう。

如月くんも思ってるなんて、そんなことないと思うんだけど……?

半信半疑な私を見つめて、琉依くんはこんなことを口にした。


「奏のこと、よろしくね」

「えっ……」


突拍子もなくて、よく意味もわからない一言に、琉依くんの方を振り向くと。

彼は、「って、僕が言うのもおかしいんだけどさ」と言って笑った。


「奏って実は遠慮するタイプで、自分より人のこと気にして悩んだりするんだよ。中学の時いろいろあってから、そうなっちゃったんだよね」

「中学の時?」

「まぁ、その話はいずれ本人がしてくれると思うけど」


もしかして、それが地味な格好をしていることに関係があるのかな。

中学時代、何があったんだろう……。


「だから、素直な菜乃ちゃんといれば、きっと奏ももっとラクに生きられる気がするんだ」


独り言みたいに呟く琉依くんは、優しく微笑んでいた。

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