好きだからキスして何が悪い?
「しょうがねぇか、お前ちっせーもんな。名前の通り」

「え?」

「10億分の1。ギリシャ語で小人って意味だろ、“ナノ”って」


──なっ、なんですと!?

昨日が初対面のはずなのに、何で私の名前知ってるの!?


「どどどうして私の名前……!」

「有名だよ、メガネクラちゃん」


クッ、と意地悪な笑みとともに言われ、私は絶句した。

存在感がないはずの私が、まさかそのあだ名で知れ渡っていたなんて!

目を見開いてカッチリと固まる私の横を、「じゃーな」と短く言って通り過ぎるソウくん。

彼が出て行ってから動き出すのに、しばらく時間が掛かった。



いろいろとショックで、力が入らない両手になんとか荷物を抱えて教室に戻った。

教壇にそれを置くと、自分の席で友達と話していた文ちゃんが私に気付き、「やっと来た」と言う。

私を待っていてくれたらしく、パンはまだ手付かずで机の上に置かれていた。

やっぱり素っ気なく見えて優しいなぁ、文ちゃんは……。


「遅いよー。先食べてればよかったわ」


さっそくパンの袋を開け始める文ちゃんに、私は人目も気にせず飛び付く。

< 24 / 278 >

この作品をシェア

pagetop