好きだからキスして何が悪い?
何が起こったのか、理解できたのは数秒後。

ぐいっと腕を引かれた次の瞬間──私は彼の腕の中に収まってしまったんだ。


「~~~っ!?」


驚きすぎて声が出ない。

目を見開いて身体を硬直させる私の耳元で、大好きな人の落ち着きのある声が響く。


「お前……まだ誰のものにもなってねーの?」


だ、誰のものでもないですよ私なんてー!

と、心の中では叫べるけど、実際は声が出ない。

代わりにコクコクと頷くと、私を抱きしめる腕の力が強くなった。

そして。


「俺のものになれよ……菜乃」


とびきり甘く、セクシーな声に刺激されて、

思考回路が壊された。


……そ、んな。これは夢?

だって、如月くんのものに、って……!


「そ、それ、って……」

「“お前が好き”って意味の他に何があるんだよ」


──ドキン!と、“好き”の二文字を聞いて心臓がジャンプした。

うそ……嘘だ。これは間違いなく夢だ。

もしくは、おかしくなっちゃった私の脳が、自分に都合良く変えてるだけ。

そうじゃ、ない?

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