好きだからキスして何が悪い?
放心状態で少し顔を上げると、10センチくらいの近距離に彼の綺麗な顔がある。

その瞳はとても真剣で、熱を帯びていて、冗談を言っているようには見えない。

本当に、私のことが……好き、なの?


「と、友達として、じゃない……ですよね?」


どうにも信じられなくて、途切れ途切れに震える声を漏らした。

その時。


「──っ!!」


ふわりと彼の顔が近付いて、視界から夕闇が迫る空が消えた。

見開いた目に映るのは、長いまつげが縁取る、伏せられた瞳。

唇には、柔らかくて温かな感触──。


ほんの数秒で離されたその唇から、こんな言葉がつむがれる。


「友達はこんなことしねぇだろ」


ふっ、とイタズラに上がった口角を見た瞬間、全身から一気に力が抜けた。


キ、キ……キスされたぁーー!?

この私なんかが、あの如月くんに!!


「あ、おい」


糸が切れた操り人形みたいに、へなへなと腰が砕けそうになる私を、彼が支えてくれる。

もーダメです……

まさかの告白に突然のキスって、破壊力ありすぎます!!

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