好きだからキスして何が悪い?
視界に入るのは、私を見下ろす如月くん。

彼は、おもむろに自分の眼鏡に手を掛ける。

そして、スッと取った眼鏡を放り投げると、羽根がついた帽子も取ってしまった。


「え?」

「きゃあっ……!」


私や、舞台にいるクラスメイトの困惑した声と、如月くんの整った素顔が露わになったことで、会場から上がる小さな悲鳴が重なった。

予想外の事態のせいか、照明もなかなか暗くならない。

ど、どうするおつもりですか!?


内心あたふたする私に、如月くんは手を伸ばし、そっと私の眼鏡も取ってしまった。

もうすっかり開いてしまっている目に、妖艶に微笑む顔が近付く様が映る。

そして。


──ちゅ、と唇に軽いキスが落とされた。


「っっ!?」

「「あぁぁーー!!」」


舞台の上からも外からも、興奮した叫び声が一斉に上がる。

し、信じられない……

まさか皆の前で本当にキスするなんて!!


周りがどよめく中、ただただ呆然とする私に……


「お目覚めですか、お姫様」


そう言って、破天荒な王子様はイタズラっぽく微笑んだ。

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