好きだからキスして何が悪い?
「しししょ照明照明!!」と必死に合図する野崎くんの声が耳に入り、ようやくあたりが暗くなった。


「今のうちに行くか」

「ほぇっ……!?」


真紅の衣装も脱ぎ捨てた如月くんは、上体を起こした私の手を取り、舞台裏に駆け込む。

私の眼鏡は彼が持ったままだし、暗くてよく見えない!

ぎゅっと彼の手を握って、動揺しまくっている裏方のメンバー達の間を通り抜ける。


「どどどーすんの、この後!?」

「“ふたりは幸せになりました”っつっとけ!」


皆が慌てる声を耳に入れつつ、ふたりでまだざわめきが治まらない体育館を抜け出した。

誰もいない校舎に入り、走るのをやめた如月くんだけど、手は繋いだまま。


「少しは焦っただろーな、アイツら。ざまあみろ」


口元にだけ意地の悪そうな笑みを浮かべて言う彼。

私もさっきのキスシーンが脳裏に蘇ってきて、急に恥ずかしくなる。


「如月くん、何であんなこと……」

「ごちゃごちゃ言う奴らにわからせてやったんだよ。俺が本気だってことを」


私を見下ろした彼にクスッと微笑まれ、ドキッと胸が鳴った。

ひゃぁ~、恥ずかしいけど嬉しい……!

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