好きだからキスして何が悪い?

先生に見付からないようにこっそり移動して、やってきたのは久々の屋上。

残暑も和らいで、青空にはうろこ雲が広がっている。


「しばらくここにいるか」

「うん。だいぶ過ごしやすくなってきたね」


ふたりで柵に手を掛けて、文化祭の準備が整った校庭を眺める。

すると如月くんは、ポケットにしまっていたらしい私の眼鏡を差し出してきた。


「ん」

「あっ、ありがとう」


そうだった、忘れてた。

受け取ったそれを掛けようとしたけど、ふとあることに気付いて動きを止める。


「もしかして、“まだ地味な格好のままでいろ”って言ったのは、今日のこのため?」

「あぁ。どうせバラすなら、お姫様の時の方がいいと思って。インパクトがあって面白いだろ」


劇を決めた時の内田くんみたいなことを、彼がしたり顔で言うから笑ってしまった。

もしかして如月くん、キスシーンから私の本当の姿を皆に見せるまでのこと、結構前から考えてた?


計画犯だったのか……やっぱりこの人にはかなわないな。

でも彼のおかげで、私の世界はすごくカラフルに色付いたんだ。

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