好きだからキスして何が悪い?
「きゃ──!」


ぶつかる!!

そう思ってギュッと目を閉じ、顔を背けた瞬間、バシッとボールが当たる音がした。

……けれど、どこも痛くない。


そっと目を開くと、私の前には人影が。

背の高いその人の背中から目線を上げていくと、少々乱れた黒髪が見える。

いつも私が授業中に見ている姿と同じ……これは如月くん?


私の盾になるように立つ彼の右手には、しっかりとボールが収まっていた。

私のこと、守ってくれたんだ──。


「きさ、らぎく……」

「ごめんなさーい!」


思わず漏れた私の声に被せて、試合中の男子が謝りながら近付いてきた。

その彼にボールを投げ返した如月くんは、私をちらりと見ると、すぐに体育館を出ていこうとする。


「待って、如月くん! ありがとう」


呼び止めてお礼を言うと、彼は俯きがちなまま少しだけ振り返り、小さく頷いた。

そしてまたすぐに足を進めてしまう。


「あっ、あと!」


もう一度引き止めた私は、不思議そうに振り向く彼に、にこりと笑顔を見せて言う。


「……バスケ、すごくカッコ良かったよ」

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