好きだからキスして何が悪い?
「現実にされる機会なんてないんだからいいでしょ、夢に見るくらい」

「まぁね」


当然のように私が言うと、文ちゃんは呆れたような顔で、ふぅとひとつ息を吐く。


「菜乃って外見ほんと地味だけど、頭ん中はぶっ飛んでるもんね。せっかく新しいクラスになってもう一ヶ月経つのに、その変な性格のおかげで誰も近寄ってこないし」

「文ちゃん以外はね」


にこりと笑いかけると、彼女も呆れ顔のまま少し口元を緩めた。


二年生に上がると同時にクラス替えがあって、文ちゃんと同じクラスになれた。

私はいつも本を読んでるか勉強してるか、もしくは妄想にふけっているか。

という感じだから、話し掛けてくるクラスメイトは案の定いない。

昔からそうだから何も気にしていないのだけど、小学校の頃からの付き合いがある文ちゃんだけは違う。

こうして毎朝一緒に登校してくれるほどだ。


どうして私なんかと仲良くしてくれるのか、ずっと前に素朴な疑問を投げ掛けたことがあるのだけど、彼女はあろうことかこう答えた。

『地味なコと一緒にいれば、あたしの良さが引き立つでしょ』……と。

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