好きだからキスして何が悪い?
家から二十分ほど歩いて学校に着くと、二階の教室へ向かう。
皆に「おはよー」と言いながら教室に入っていく文ちゃんに続いて、背後霊のように静かに入るのはいつものこと。
そして、窓際から二列目、前から二番目の私の席に向かって歩いている時。
すれ違いざまに、ドンッとクラスの男子と肩がぶつかった。
「わっ」
「あ、ごめ──」
その男子が私を振り向いたのと同時に、ぶつかった衝動で持っていたバッグをドサッと落としてしまった。
相手が私だと気付いて、若干ギクッとした様子の彼は、ぎこちない笑みを浮かべて両手を合わせる。
「ごめん、メガ……さ、冴島さん!」
「……いえ、私もすみません」
表情を変えずペコッと軽く頭を下げると、男子はそそくさと去っていった。
あんなにあからさまに避けなくても、別に私は呪ったりしないですけど。
ていうか、今“メガ……”って言いかけたよね?
隠さなくても知ってますよ、皆が私のことを陰で“メガネクラ”と呼んでるってことは。
眼鏡+根暗でメガネクラって、変な怪物みたいだし、もちろんいい気はしない。