好きだからキスして何が悪い?
「……わかる?」

「まるわかり。あたしにはね」


得意げに腕を組む文ちゃん。

はっきり恋に落ちたと宣言したわけじゃないけど、もうバレバレだったらしい。


「無理に聞くつもりはないけど、悩みがあるなら相談してよ。初めての恋なんだから、なーんにもわかんないでしょ」


文ちゃんは、私が如月くんのことを言いたくても言えずにいるのを理解してくれているんだ。

言い方は素っ気ないけど、気遣ってくれるその優しさが嬉しい。


「うん、ありがとね」


私は彼女に笑顔を向ける。

隠し事をしている後ろめたさもちょっとあったけど、今の言葉のおかげで少しラクになった。

話せる時が来たら、ちゃんと言うからね。


密かにそんな話をしていると、おもむろに如月くんが腰を上げた。

そして、誰にも気付かれないまま、バッグを持って教室を出ていく。


「……トイレかな?」

「だとしたらバッグは置いてくでしょ」

「だよねぇ」


同じく如月くんを見ていた文ちゃんと首をひねる。

まさか、このまま帰っちゃうのかな? まだ授業あるのに……。

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