好きだからキスして何が悪い?
如月くんは、いつものようにぶっきらぼうに言う。


「俺はああいう奴らみたいになりたくなくてこの格好してんだよ。シメるなんてのは冗談。だから、余計な心配すんな」


“ああいう奴らみたいになりたくなくて”……?

地味な格好していることとどんな関係があるのかはいまいちわからないけど、とりあえずパープルの一員ではないんだよね?


なんだ、そうなんだ。

あからさまにホッとしてしまい、私は安堵の笑いをこぼす。


「そっか……ならよかった! 私、てっきり如月くんはパープルのリーダーなのかなぁとか勘繰っちゃっ──」


笑いながら冗談っぽく言っていると、鋭い視線がこちらに向けられていることに気付いた。


「……へ?」


笑ったまま固まる私。

如月くん、なんか怖いんですけど……?

ギロリと睨むような彼の瞳にギョッとしていると、授業終了のチャイムが鳴り、それと同時に彼は腰を上げた。


「戻るぞ」

「あ、うん……!」


一声かけてさっさと歩き出す如月くんは、いつもと変わらないように見える。

一瞬だったけれど、あの目は何だったんだろう……。

引っ掛かるものを感じながらも、私は彼の後を追った。


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