好きだからキスして何が悪い?
それから数日は梅雨空が続き、私と如月くんも相変わらずスッキリしない距離感を保っている。
そんな私達の間に吹き荒れる嵐が訪れたのは、突然のことだった。
「Excuse me!」
お昼休み、教室で文ちゃんと向かい合ってお弁当を食べようとしていると、突然背後から流暢な英語が聞こえてきた。
驚いて振り返ると、教室に残っている皆の視線を集めた見慣れない男子が、私に向かってにこりと笑いかけている。
ふんわりとウェーブを描くブラウンの髪、優しげな目元に少し厚めの唇。
イケメンであることに違いないけど、きっと純日本人であろう顔立ちの彼をぽかんと見上げる私。
「……インチキ外国人?」
片眉を上げた文ちゃんがいぶかしげに呟いた一言が聞こえたのかは定かじゃないけど、「あ! ごめん、ここ日本だった」と、彼は陽気に笑う。
いったい何者なんですか、あなたは……。
心の中で問い掛けつつ微妙な顔をする私を、丸い瞳がまじまじと見つめてくる。
思わず身を引くと、彼はこんなことを言った。
「えーと、メガネクラちゃんって子を探してるんだけど……キミじゃないよね?」