笑顔の裏側に
それほどのことじゃない。

そう思って私はその表情を無視して平然と返す。

「これぐらいじゃ熱ではありません。もともと基礎体温は高いので、大丈夫です。」

「麻生、大丈夫じゃない時は、無理に大丈夫って言わなくていいんだぞ。まだ治ったわけじゃないんだろ?食欲もないんだし、だるさだって残ってるはずだ。もっと甘えていいんだ。弱さを見せていいんだよ。」

真っ直ぐ私の瞳を見据える。

大丈夫?

そう聞かれたら、大丈夫と答えてしまう。

なかなか大丈夫じゃないなんて言えない。

甘えるってどうやって?

弱さを見せるってどうすればいいの?

分からない。

迷惑かけたら嫌われる。

私は誰かに嫌われるのはお母さんだけで十分だ。

「本当に大丈夫です。」

これは本心だ。

確かにだるくて少し頭が痛い。

でもこれはだいたいいつものことで。

体育のように激しく動くのは辛いが、普通に過ごす分には平気だ。

先生は納得していないようだが、そのまま朝ごはんを食べ始めた。

その間に私はキッチンを片付ける。
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