笑顔の裏側に
そして洗濯物を片付け終えて、リビングに戻ってくると、先生が洗い物をしていた。

慌ててキッチンに駆け寄る。

「先生!いいですよ。私やりますから。」

「いいから。これぐらいやらせて。」

そう言って片付けてくれた。

そういえば先生っていつまでもここにいていいんだろうか?

学校は休みだと言っていたが、その他の用事もあるだろう。

片付け終えるのを見計らって問いかけて見る。

「先生、お時間の方は大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫だよ。今日は暇だからさ。」

いいのかな。

私のせいでせっかくの休みを潰してしまう。

「もう私は大丈夫ですよ?だから私のことは気にしなくていいです。これ以上ご迷惑はかけられません。」

先生は私の前に来て真っ直ぐ私の瞳を見て言った。

「迷惑なんて思ってないよ。俺は麻生のことが心配だし、俺がお前のそばにいたいんだ。だから気にするな。」

どうしてそんなに優しくしてくれるの?

私、迷惑かけてるのに。

いつも一人ぼっちな私は誰かがそばにいてくれるだけですごく幸せだった。

「ありがとうございます。」

そう言って頭を下げた時だった。

玄関からガチャリとドアが開いた音がしたのは。

そしてリビングの方に足音が近づいてくる。

それはお母さんのものだった。
< 105 / 518 >

この作品をシェア

pagetop