笑顔の裏側に
「点滴、あと15分ぐらいかしらね。」

愛ねえに言われてベットを見ると麻生の頬は涙で濡れていた。

思わず愛ねえと顔を合わせる。

「ねえ、泣いてるのっていつもなの?」

愛ねえは顔をしかめてそう言った。

「わかんないけど、俺が見る限りは毎回…。」

「そう…。やっぱり現実の反動なのかしら。精神的にはすごくきてるのかもしれない。」

そうだよな。

普通は親に愛されるはずの子供。

でも麻生は違う。

暴力を振られ、家に居場所などない。

だけど外では絶対にそんな素振りは一切見せない。

弱音や泣き言一つ言わない。

涙を流すのはいつも影に隠れて一人で。

絶対に誰にも涙は見せない。

いつだって完璧な麻生優美だ。

本当は辛いのに。

心では泣きたいと叫んでいるのに。

それが眠りによって無意識に解放されるのだろう。

俺はそっと麻生の涙をそっと拭った。
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