笑顔の裏側に
「ごめんね。私さ、歩からあなたのこと全部聞いたわ。」

「そうですか…。」

何となくは感じてた。

診察中、私の痣が見えないようにしてくれてたし、出来るだけ私の体は見ないようにしてたから。

「歩、呼ぶ?」

「いいえ…。」

どんな顔して会えばいいか分からない。

あんなひどいこと言ったのに、病院に連れて来てくれて。

お姉さんの病院なのも私のため。

自分の親の病院に行くのが普通なのに私を気遣って。

先生の優しさに触れるたび怖くなる。

離れて行ってしまうのに離れられなくなりそうで。

「会いたくない?」

会いたくないわけじゃない。

本当は会いたい。

声が聞きたい。

でも先生から告げられるであろう言葉を考えると、動けなくなる。

ひどい言葉ばかり浴びせる私にきっともう呆れているだろう。

愛先生は何も答えない私の隣に座った。

「優美ちゃん。私は医者だけど、今は歩の一人の姉として接しさせてね。優美ちゃんも同じように接して欲しい。」

静かにでも芯のある強い声で言った。

私は小さくうなづいた。
< 121 / 518 >

この作品をシェア

pagetop