笑顔の裏側に
「まだあるんじゃない?歩に対して思ってること、感じてること。だから私の言葉に何かが引っかかる。今日初めて会った人に話すことじゃないと思う。でも歩には直接言えないことなのよね?だから必死に強がって隠してる。私は歩の姉としてあなたの本当の気持ちが知りたい。」

真っ直ぐな瞳でしっかり私を見据えて愛先生は言った。

こういうところは姉弟揃って似てるのかもしれない。

私はその強い瞳に答えようと思えたのだから…。

「今から言うことは絶対に先生には言わないでくださいね。」

そう前置きをし、私は深呼吸をして再び話し始めた。

「先生はいつだって私に真剣に向き合ってくれました。どんなにひどい言葉を言っても、いくら突き放しても…。私を見捨てたりなんてしなかった。そしてある日、先生が言ってくれたんです。愛してると…。すごく嬉しかったんです。でも同時に怖かった…。」

そこまで言うと、涙が堪えきれなくなってきて一度話を止める。

同時にこれ以上言ったら、愛先生に面倒だと嫌われてしまうような気がして怖くなった。

「泣いていいのよ、優美ちゃん。泣くってね、すごく大切なことなの。ずっと泣くのを我慢してるとね、心が壊れちゃうんだよ。だから泣きながらでも構わない。ゆっくりでいいから話してくれる?私はずっと優美ちゃんのこと、話すことができるまでそばで待ってるよ。」

その優しい言葉に余計に涙が溢れて次々とこぼれ落ちる。

私は袖で何度もぬぐいながら少しずつ話した。

「私…。気づいてしまったんです…。自分の…気持ちに…。私…いつの間にか…先生のことが…好きになっていたんです。だから…私のすべてを知って、嫌われるのが怖かった。」

「そっか…。」

私が涙でつっかえても愛先生はしっかり耳を傾けて聞いてくれていた。

時々相槌を打ちながら。

そっと肩を叩きながら。
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