笑顔の裏側に
「麻生、もういい。顔を上げて?」

先生はそう言って私を真っ直ぐ見つめる。

「話してくれてありがとう。もう十分だよ。もう思い出さなくていい。」

その瞬間、涙が頬を伝った。

「嘘ついて…騙したりして…本当にごめんなさい…ごめんなさい…」

私はただ謝り続けていた。

他に何を言っていいかわからなかった。

こんな私を受け入れてくれる優しさに申し訳なさがいっぱいだった。

「もういい。もういいから…。」

先生はそう言って背中をリズム良く叩いてくれた。

愛お姉ちゃんはそんな様子をただ眺めていた。

少し落ち着くと、先生から離れた。

そして2人に向かって言った。

「でも受験が終われば家を出ます。だから大丈夫です。ただ…全てを知った上で決めて欲しかったんです。こんな私のそばにいてくれるかどうか…。」

そこまで言って怖くなって思わず下を向く。

大丈夫だよね?

離れていかないよね?

「そんなの聞く前から決まってる。」

「え…。」

そんな声に顔を上げた。

「そうよね。」

先生と愛お姉ちゃんは顔を見合わせて笑い合い声を揃えて言った。

「ずっとそばにいるよ。」

せっかく落ち着いた涙がもう一度溢れ出す。

「ありがとうございます!」

私は立ち上がって2人に何度も頭を下げた。

その後、少したわいもない話をして愛お姉ちゃんから連絡先をもらい、先生と家に帰った。
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