笑顔の裏側に
そうしてアドレス交換も無事終わって、再び沈黙が流れる。

でもさっきと一つ違うのは、先生が私にピッタリと寄り添っていることだ。

先生の腕が触れている部分に意識が集中してしまう。

「なあ、麻生?」

「はい?」

先生の方を見ると、瞳は至って真剣だった。

「どうしたんですか?」

なかなか話さないことへの不安ともどかしさから尋ねる。

「俺たちさ、付き合うってことでいいんだよな?」

え…。違うの?

お互い想い合ってるし、お互いの気持ちも知ってる。

でも確かに付き合おうという言葉は交わしてない。

「違うんですか?」

「いいや…。それでいいんだけど…。俺たちさ、教師と生徒だし…。」

先生は言葉を濁して言った。

何だそういうことか。

「いいんじゃないですか?先生、私とお付き合いしていただけますか?」

私は先生の瞳を真っ直ぐ見てそう言った。

教師だから。

生徒だから。

そんなの関係ない。

私は教師だからという理由で先生を好きになったわけじゃない。

真っ直ぐぶつかってきてくれて。

包み込むような優しさを持っている先生だから好きになったのだ。
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