笑顔の裏側に
歩side

麻生の家を出て、自宅に帰る途中、俺は今日のやり取りを思い出していた。

お母さんとの衝撃的な事実。

それでも一切弱さを見せない麻生。

でも本当は崩れないようにギリギリで保っていたことを実感した。

愛ねえの作戦によって麻生の本当の気持ちを知ることができて。

麻生が初めて俺に見せてくれた弱さ。

そして俺への想い。

思い出すだけで顔がニヤける。

俺もちゃんと好かれていたんだと安心できた瞬間だった。

恥ずかしそうに赤らめる顔。

強く抱きしめると壊れそうなほどの華奢な体。

少し潤んだ瞳。

どれもが愛おしくてたまらない。

さっきまで一緒にいたけれど、もう今すぐ会いたい。

今日だって本当は泊まりたかった。

だけど無断で昨日泊まった以上、今日もという訳にはいかない。

第一に、泊まる理由がない。

お母さんは今日は帰るようだったから。

夜に電話しよう。

また一人で泣いてないか心配だ。

そう決めて俺は家まで車を走らせた。
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