笑顔の裏側に
家に着いてすぐに愛ねえに電話をかける。

「歩?どうしたの?優美ちゃん、何かあった?」

いきなり麻生のことかよ。

相当気に入ったんだな。

「麻生は家まで送って今帰ってきたところ。愛ねえ、今日は本当にありがとな。」

麻生の体調のことも俺一人じゃ何もできなかった。

何より麻生の本当の気持ちを知れたのは愛ねえのおかげだ。

「いいわよ。優美ちゃんならいつでも大歓迎。それより大事にしてあげなさいよ、優美ちゃんのこと。泣かせたら、承知しないから。」

「わかってるよ。」

言われなくても大事にするさ。

今は簡単にはそばにいられないけどな。

「それとさ、今時間ある?少し気になることがあるのよね。」

今までふざけていた愛ねえの声が真面目になる。

一瞬胸がドキッとはねた。

気になること?

もしかして麻生のことか?

「いいけど…。」

「歩は優美ちゃんのこと、瞳の奥が真っ暗で、無理して笑ってるって言ってたじゃない。私もそれはすぐに分かったわ。この子は心から笑えないんだなってね。だけどね。もう少し気になる点があってさ…。口癖っていうか…その…気のせいって言われればそれまでなんだけどね?」

「何だよ?」

じらす愛ねえに少しイラつく。

その言葉の続きが気になってたまらなくもどかしい。
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