笑顔の裏側に
「優美ちゃん、何を聞いても大丈夫ですっていう言葉が多いのよね。もちろん本当に大丈夫ならそれでいいんだけど…。他の患者さんでもそういう人もいるし。だけど、優美ちゃんの場合は違う気がするの。心の傷は大きいし、深いわ。心から笑えなくなって強がることに慣れていった分、その言葉が優美ちゃんの心を抑えつけてるのかもしれない。」

愛ねえの話に耳を傾けながら必死に麻生との会話を思い出す。

何度大丈夫という言葉が出てきただろう?

今日だけでも何度も聞いた。

それに思い返して見ると、麻生と会話する中で、その言葉がない方が珍しい気がする。

そう思うと怖くなった。

麻生はどんな気持ちで大丈夫と言っていたのだろうか?

その言葉で何度壊れそうな自分をごまかしてきた?

俺はそんなことにも気づけなかった。
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