笑顔の裏側に
その後も何度も電話をかけてやっとつながったことに俺はすごく安心した。

電話から聞こえる麻生の声が愛しい。

会いたい。会って話したい。

そんな衝動を抑えながら麻生に上手く今まで連絡が取れなかった理由を聞きたかった。

でも何て聞いたらいいかわからなくて言葉に詰まってしまう。

当たり障りのない言葉で繋ぎ、一番気になっている核心部分をある程度遠回しについた。

でも返ってきた言葉は

“大丈夫”

ただそれだけだった。

俺が念を押しても無駄だった。

ただ大丈夫の一点張りで。

最後は一方的に体調が悪いと切られてしまう。

やっぱり本当に体調悪いのだろうか?

だから連絡が取れなかった?

でも電話から聞こえる麻生の息遣いは少し荒かった気がする。

また熱が上がったんだろうか?

どちらにせよ、心配だ。

麻生---。

どうしたら俺に弱さを見せてくれる?

どうやったら麻生の心の支えになれる?

しばらくの間、耳元でむなしく鳴り続ける機械の音を聞きながら、俺はリビングで一人立ち尽くしていた。

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