笑顔の裏側に
少し経った後、

「先生?」

そう言葉を発するのが精一杯だった。

すると先生はゆっくりと離した。

「ごめん。俺、松本に嫉妬した。」

真っ直ぐ見つめられて何も返せずにいると、先生はそのまま続ける。

「お前と自然に話せる松本が羨ましかったんだ。それにお前は松本に笑顔向けてるし。松本は松本で耳まで真っ赤に染めちゃってさ。それに焼いた。」

それを聞いて私も真剣に答える。

「松本君とは本当に対したことじゃないんです。ただ面談が終わるのを私が教室の前で待ってたから、待たせてごめんっていうことで。それに答えていただけです。だから…」

本当に何もなかったことを懸命に伝える。

話してたと言っても一言二言のみ。

誤解して欲しくなくて事細かに説明していく。

「もういいよ。ちゃんと分かってる。俺の方こそごめんな。」

先生はそう言ってもう一度抱きしめた。

「好きです。先生…」

「俺も大好きだ。」

そのままお互いに見つめ合うとどちらともなくキスをした。

何度も何度も角度を変えながらキスを繰り返していく。

次第に呼吸が乱れていく。

でもすごく甘くて溶けそうなくらい幸せだった。

苦しさが限界にきて膝から崩れ落ちそうになると先生は見越したようにそっと私を支えてくれた。

「ごめん、やりすぎた。」

そう言う先生はというと全然呼吸が乱れていない。

私はゆっくりと呼吸を整えながら首を横に振る。
呼吸が落ち着いてくると、

「俺のせいでズレたな。そろそろ本題に入ろう。隣座って。」

先生は自分が座ろうとしている椅子の左側を指差す。

私も椅子に腰を下ろした。

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