笑顔の裏側に
「どうしようか?時間決めておいた方がスムーズだよな。Writingを使う生徒も他にもいるから、お前いつなら平気?」

そっか。私だけじゃないんだよね。

個別に指導してもらえるのは。

こんな風に2人きりで教えてもらえるんだよね。

先生はみんなの先生であり、私だけの先生じゃない。

その事実に改めて気づき、胸がキリッと痛む。

「火曜日か、木曜日か、金曜日ならいつでも平気です。」

何事もなかったように平然と返す。

こんな自分勝手な感情を持っていたなんて知られたくなくて。

「じゃあ、木曜日の17:00からでいいか?」

少し考えるような素振りをみせてから先生は答えた。

大丈夫そうだ。

気づかれていない。

すぐに答えない私をきっと予定を考えているとでも勘違いしたんだろう。

でもこちらとしては好都合だ。

「はい。よろしくお願い致します。」

「あと、英語だけじゃなくて他教科の先生もお前が必要と感じるなら個別で指導してくれるそうだ。国語とか数学とか。」

どうして私なんかのために?

予想外の言葉に戸惑いを隠せない。

「みんな、お前のこと、応援してるんだよ。だから指導をお願いするにしてもしないにしても、一度担当の先生のところに行きなさい。」

応援してる?

こんなに出来損ないな私を?

涙が溢れそうになるのをこらえる。

こんな私でも期待してくれる人がいたんだ。

「はい。ありがとうございます。」

さっきまでの沈んだ気持ちが少し和らぎ、先生に笑顔を向ける。

先生も安心したように微笑み返し、資料等を片付け始めた。

その動作で面談は終わりだと悟り、私も席から立ち上がった。
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