笑顔の裏側に
「瀬立先生、すみません。ちょっと保健室を空けてしまうのですが、それまで麻生さんのこと、お願いしてもよろしいですか」

と柏木先生が小声で言った。

「はい。大丈夫ですよ。」

「すみません。お願いします。」

そう言って急いで行ってしまった。

保健の先生も忙しいんだなあと思いながら、麻生の寝顔をぼんやりと見ていた。

すると突然、麻生が顔しかめた。

「どうした!麻生!どこか苦しいのか??」

声を掛けるが返答がない。

どうしよう。どうしたら…。

「い…ゃ…」

「麻生??」

麻生が何かをつぶやいた。

「い…や…いや…」

「いや??」

何が嫌なんだ??

どこか痛むのか??

さっきよりいっそう顔しかめ、額に汗が滲んでいる。

それに顔色も青白い。

俺は落ち着かせようとそっと頭を撫でようとしたその時だった。

「いや!!」

いきなり麻生が飛び起きた。

呼吸も乱れてかなり苦しそうだ。

突然のことで頭が真っ白になる。

「麻生…」

かろうじて絞り出した声で麻生がこちらを向いた。

その表情はあの瞳に光のない悲しみに満ちたものだった。
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