笑顔の裏側に
歩side

まさか優美にあの場面を目撃されるなんて思わなかった。

走り去って行く優美を今すぐにでも追いかけていきたい衝動に駆られる。

でも今は教師としての立場がある。

1人の男として行動することは許されない。

あいつの机に目をやると、まだカバンはある。

きっとここに戻ってくる。

その時に話せばいい。

今は木下が優先だ。

落ち着いてきた木下にそっと声を掛ける。

「お前の気持ち、聞かせてくれないか?」

木下は泣きながらゆっくりと話してくれた。

木下は全然成績が上がらなくて焦っていた。

そこにちょうど質問を受けていた教師から心ない言葉が降りかかる。

こんな基礎の問題ができないのかと。

今のままでは志望校は無理だと。

確かに木下の志望校は木下の今の成績では難しい。

それは木下もわかってるはずだ。
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