笑顔の裏側に
「単刀直入に言います。先生と優美は教師と生徒の関係ではないですよね?」

思わず唖然とする。

どうしてそれを知っている?

「俺は優美とは幼馴染です。ずっと一番近くで優美を見てきた。だから分かるんです。優美が誰を追いかけてるか。誰が好きなのか。」

言葉を失ったように何も言わない俺を見兼ねてか、神谷は続ける。

「2学期に入ってからすぐだったでしょうか?優美に笑顔が増えました。あのぎこちないものではなく、自然体に近いものが。」

自惚れてもいいのだろうか?

優美を少しでも救えていると。
「でも3週間ぐらい前から笑顔が減りました。自然体に近いものもほとんどなくなった。それは先生が関係してるんですよね?」

神谷はいたって真剣だった。

だから俺もちゃんと応えなければならない。

嘘やごまかしは神谷には通用しない。

「ああ。麻生に別れを告げられた。」

そう言えば神谷は驚いたように目を見開いた。

「2人の間に何があったかは知りません。でも優美にはあなたが必要です。俺じゃダメなんです。だから優美を救ってやってください。」

立ち上がって頭を下げる神谷を見て、俺は悟った。

神谷も優美を好きなのだと。

本気で大切に想っているんだと。

言葉や静かな口調からそれがとても伝わってくる。

「どうしてそこまでしてくれるんだ?
お前だって…。」

そんな俺の疑問を見透かしたように神谷は答える。
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