笑顔の裏側に
「どうした？」

そんな私に気づいて振り返ってくれる。

「ごめんなさい。何でもないです。」

行かないで。

本当はそう言いたい。

でも先生だって忙しいのだ。

今日ここまで私のために来てくれた。

それで十分じゃないか。

前を歩く先生の後を着いて行く。

「じゃあ、邪魔したな。玄関まででいいから。今日はありがとう。」

「いえ。こちらこそお忙しい中、来ていただいてありがとうございました。お気をつけて。」

先生は玄関を開けて出て行く。

ガチャンと閉まる音が玄関に響いた。

同時に襲ってくる寂しさ。

思わず靴を履いて玄関を出る。

でもそこには先生はいなくて。

鍵もかけずに門を出れば、暗闇を歩く先生の姿がそこにあった。

「待って！」

叫んで再び走り出す。

立ち止まった先生に後ろから抱きついた。

「行かないで…。そばにいてください。」

もう一度先生のそばにいられることが夢のように感じられて。

先生が行ってしまったら今日のことが嘘に変わってしまうんじゃないかと不安になって。

学校に行けば普段のように先生と生徒。

今日のことが何もなかったかのように。

そのことがどうしようもなく怖くて辛い。
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