笑顔の裏側に
先生は私が先生の腰に回した腕に自分の手を重ねた。

「分かった。俺の家においで。」

「え?」

先生の家へ?

そこは私の家じゃないの?

「お前の家は保護者が不在の時に許可もなく泊まることはできない。こないだのこともあるしな。だから俺の家に泊まれ。明日の夜また家まで送っていくから。」

そっか。

ちゃんと考えてくれてるんだ。

「ありがとうございます。」

そう言って来た道を先生と戻る。

さすがに鍵もかけずに出てきたことは怒られたけど。

でもなぜか嬉しそうだった。

先生にはリビングで待っててもらって制服から部屋着に着替え、急いで準備をする。

着替えと必要最低限のものをバックに詰め込み、一応ちょっとした勉強道具も持っていく。

準備が終わり、リビングへ向かう。

「お待たせしました。すみません。わがまま言って…。」

「いいよ。俺も一緒にいたかったから。」

そう言って荷物を持ってくれる。

家を出て先生が車を止めたという近くの駐車場に向かった。

いざ先生の家に行くとなると緊張する。

何も言わなくなった私に気づいてか、先生は私の手を握ってくれた。

私もギュッと握り返す。

車に乗れば、静かなバラードが流れ、お互いに話さなくても心地よい雰囲気だった。

先生の家には20分ほどで着いた。

意外に近いんだなと思いつつ、先生の後について行く。

「お邪魔します。」

と言って入れば、綺麗に片付けられた部屋に案内された。

男の人なのに綺麗好きなんだなと感じる部屋だった。

シンプルな家具で揃えられていていかにも先生らしい部屋だった。

「先に風呂入ってこいよ。」

タオル等を私に貸してくれる。

お言葉に甘えて先に入れさせてもらった。

先生がお風呂に入っている間、ドライヤーを借りて髪を乾かし、化粧水を塗る。

それが終わるとすることもなくて、ソファの足元に寄りかかった。

するとソファーから先生の香りがする。

先生に抱きしめられているような気がして、ソファーに頭を倒し、腕を枕代わりにして目を閉じた。
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