笑顔の裏側に
第4章 支えたい笑顔

埋められない溝

優美side

朝目が覚めると大きくて広い胸板が視界にあった。

昨晩のことを思い出して、頰がボッと一気に赤くなった気がした。

そうだ、私ったら、先生の言葉に甘えてすごく恥ずかしいことを口走った気がする。

でも同時に込み上げる嬉しさ。

私のことを大切にしてくれているんだなって実感できた瞬間だった。

いくら覚悟はしていても、初めてだし不安や恐怖は拭えない。

だからゆっくりでいいって言われてホッとしたのは事実だ。

先生のことを知っていく中で、少しずつ少しずつ心の準備をしていこう。

そう決めて視線を上に見上げれば、先生の寝顔がすぐそばにあった。

反射的にガバッと下を向く。

こんなに近かったんだ…。

はやる胸を抑え、もう一度ゆっくりと視線を上げれば、気持ち良さそうな寝顔が視界に入る。

まだ起こさない方がいいよね。

そう思い、そっと手を持ち上げて体を抜いた。

そしてなるべく先生に振動が伝わらないようにそっとベットから降りる。

近くにあった棚の上の時計を見れば、まだ7時前。

朝ごはんの準備でもするとしようか。

そう思い、キッチンに向かう。

「失礼します。」

勝手に開けるのはまずいとは思ったけど、先生が寝ている以上どうしようもなく、一言断りを入れてから冷蔵庫を開けた。

中にはお茶やビールなどの飲み物ぐらいしか入っていない。

ちょっと待って。

これでどうやって生活しているわけ?

もしや毎日外食?

それじゃあ体に悪いよね…。

先生は料理とかしないのかな?

仕方なく冷蔵庫を閉め、どうしようかと佇む。
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