笑顔の裏側に
先生の後に続けば、先生は迷わずパンとかおにぎりのコーナーに行く。

そしておにぎりを1つと菓子パンを1つ手に取った。

「ちょっと待ってください。朝ご飯、それにするつもりですか。」

「そうだけど…。」

「ダメですよ、そんなのばかりじゃ…。私が何か作りますから。」

先生が持っているものを元の場所に戻す。

そしてサラダコーナーに行った。

先生も黙ってついて来る。

サラダだけじゃなくて、カットされた野菜がたくさん入ったものも売っている。

これなら使えるかな。

「先生、家にお米はありますか?」

「あるよ。」

「じゃあ、調味料は?」

「醤油と塩、砂糖…あとは胡椒とか…。あ!味噌もある。」

それぐらいあれば十分だ。

よし野菜の雑炊でも作ろうか。

本当ならちゃんとほうれん草とかごぼうとかの野菜も自分で切って入れたいんだけど。

今回ばかりは仕方ないかな。

カット野菜1袋買ってコンビニを出る。

「なあ、それだけで何作んの?」

先生が不思議そうに尋ねてくる。

「野菜の雑炊ですよ。たいしたものはできないんですけど。」

そう答えてもいまいち腑に落ちないようだった。

「先生は何が好きですか?」

「うーん。なんでも好きだけど…、ハンバーグかな。」

ハンバーグか。

結構手間がかかるから、夜かな。

「他には?」

「オムライスとかスパゲティとか…。なんでそんなに聞くの?」

「昼と夜のご飯、何がいいかなと思って…。あ、もしかしてご迷惑ですか?」

どうしよう。

なんか1人で突っ走っちゃってるけど。

先生はそんなの望んでなかったかな?

私の独りよがりだった?

「そうじゃないんだ。ただ気になっただけ。作ってくれるのは嬉しいよ。だけど大変だろう?」

迷惑じゃないんだ。

よかった。

「いいえ。いつも時間があるときは作っていますから。それに私のわがままを聞いてくれたお礼です。」

「それならお言葉に甘えようかな。」

その言葉に微笑めば、先生も笑顔を見せてくれた。
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