笑顔の裏側に
そして必要な材料を全てカゴに入れてレジに並んだ。

結局ここでも先生がお金を払ってしまった。

現金で払おうとすれば、あっさりお店の人にクレジットカードを渡していて、私の出る幕はなかった。

またしても〝大人〟を見せつけられる。

その度私は子どもだということを突きつけられる。

早く大人になりたい。

どんなに背伸びをしたって先生の隣には胸を張って並べない。

今日一日、初めて先生と学校外で過ごしただけなのに。

そんな現実に胸を締め付けられたような気がした。

答えのない、途方も無いことを悶々と考え込んでいるうちに、いつの間にか見慣れた風景まで来ていた。

「優美?ちょっと疲れたか?ボーとしてるけど‥」

隣からかかる声にハッと我に返る。

どんなに願ったって先生との年の差を埋めることはできない。

今はまだ、子どもと大人という世界の違いも。

こればかりはどうしようもないのだ。

こんなことで先生に心配をかけてしまうなんて。

情けないにも程がある。

「いいえ。ハンバーグの作り方を思い出してただけです。最近作っていなかったので。」

何とか取って付けたような理由を紡いだ。

我ながら何て嘘ぽい。

自分で言いながら苦笑した。

すると、赤信号で止まった際に、隣からいきなり手が伸びてきた。

何事かと思っているうちに、気づけば、先生の手が額にあった。

「熱はないな。酔ったか?ごめんな。遠くまで連れ回して。」

その言葉にやっぱりバレたかと苦笑した。

「ほんとに大丈夫ですって。ちょっと考え事です。大したことじゃありません。」

「そっか。」

その言葉とほぼ同時に車が再び走り出す。

私は気持ちを切り替えるように、小さく深呼吸をした。
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