笑顔の裏側に
それからすぐに家に着き、早速準備に取り掛かる。

その間先生はテレビを見たり休憩したりしていた。

ハンバーグを焼く音や匂いに惹かれて一度キッチンにやってきたけど、お楽しみにってことでソファーに戻ってもらった。

先生に見られてると思うと、緊張して失敗したら困るし。

待っていたら悪いと思い、出来るだけ急いだ。

そして出来上がったハンバーグと温め直した野菜スープを盛り付け、テーブルに並べる。

先生はもう席に座って今か今かと待っていた。

私が席に座ると、

「いただきます。」

と言って、まずはハンバーグに手をつけた。

「どうですか?」

私は箸を持ったまま、尋ねる。

「すごく美味いよ。」

その言葉に安堵し、私も口に運ぶ。

ちょっと水分が多かったかなと思いながらも、自分の作ったものを食べてもらえることの喜びを噛み締めていた。

いつもは自分の分しか作らないから。

たとえ作っておいても、食べてもらえることはあまりないし、食べるときは別々だ。

こんな風に自分の作ったものを一緒に食べて。

美味しいと言ってもらえて。

こんなに幸せなことはないと柄にもなくそう思った。

野菜スープもハンバーグもお代わりをしてもらえて、ますます作りがいがあるなとしみじみ思う。

綺麗に食べてくれた食器を満たされた気持ちで洗っていく。

洗剤でお皿を洗おうとした時だった。

いきなり後ろから抱きつかれ、思わず短い悲鳴をあげる。

危うくお皿を落としそうになった。
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