笑顔の裏側に
翌日。

今日は個別指導の日だ。

木下さんとのこと、ちゃんと言わなきゃいけないと思う。

でも負担は増やしたくないとも思う。

もう少し落ち着いてから、時期を見て話そうと決めた。

いつも通り英語科準備室で行うはずだったが、昨日のことを考えると、どこか別の場所の方がいいと思った。

人気が少なく、目立たない場所。

思いつく場所は進路指導室。

あの部屋は磨りガラスだから中の様子が見えない。

ドアの横には〝使用中″の文字も掛かるため、誰かが入ってくることもない。

先生には朝、メールで、英語の指導だけじゃなく進路の話もしたいから進路指導室が良いということを伝えておいた。

学校に着くとすぐに、了解という旨の返信が来ていてホッと肩をなでおろす。

これでとりあえず今日は一安心かな。

今後はもっと気をつけないと。

何度も自分に言い聞かせて気を引き締める。

そして放課後。

先生と一緒に進路指導室へ向かう。

前までは必要以上に2人でいることを避けていたから、別々に向かうことが多かった。

でも今では、お互いに何もなければ教室から自然と一緒に行くようになっていた。

こんなところを見られたらまずいかな。

側から見れば、先生と生徒の範囲内だけど、見る人から見れば、勘繰られるのだろうか。

昨日のこともあり、いつも以上に警戒してしまう。

隣を歩く先生の速度より遅くして、少し後ろを歩く形をとった。

先生はチラッとこちらを見たけど、人目があるからか何も言わなかった。
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