笑顔の裏側に
「先生、ここのところ顔色も悪いし、少し痩せたんじゃないんですか?今だって頭痛いんでしょう?」

意を決してそう言うと、黙ってしまった。

「進路の話なんてありません。嘘ついてごめんなさい。でも先生のことが心配なんです。」

先生がゆっくりと息を吐き出した。

それに思わず緊張が走る。

ちょっと踏み込み過ぎただろうか。

余計なお世話だったかな。

「本当に忙しいだけなんだ。もうすぐ期末試験とセンター講習も始まるだろう。だからその準備でちょっとバタバタしてるんだ。」

まただと思った。

そうやって私から目を逸らして白々しい嘘で誤魔化す。

でも先生がそう言う以上、私にはもうどうしようもなかった。

頑なに本当のこと言わない。

その態度は言いたくないと私を拒否しているようにも思えた。

「じゃあ、今だけでも休んでください。」

そう言って椅子を後ろに下げた。

そして膝の上に寝るように促す。

だけど先生に動く気配はない。

仕方なく腕を引っ張って無理やり頭を乗せた。

起き上がろうとする先生に頭に手を乗せ、カバンの中からいつも使っているブランケットを出す。

それを先生にかけた。

「私はここで勉強してますので、先生は少しでもいいから休んでください。」

半ば強制的に会話を終了させ、私は勉強を始める。

先生が私の名前を呼んで、抗議の声を挙げていたけど、全て無視した。

やがて諦めたかのように黙り、そのあとすぐに寝息が聞こえてきた。
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