笑顔の裏側に
大きくため息を吐いて、買ってきたものを出す。

そして作り始めた。

作り終われば帰してもらえるだろう。

ただ黙々と作ることに専念したら、1時間もかからずに出来上がった。

卵粥と少し野菜の入ったおじや。

少し良くなって食欲が出てきたら、食べて欲しいと思って作った2つのメニュー。

これを食べて、早く元気になったらいいなと思った。

片付けものをしていると、愛お姉ちゃんがリビングに戻っていた。

「うん、良くできてるわね。これを食べれば、歩もすぐに元気になるわ。愛情たっぷりだものね。」

鍋の蓋を開けて、中身を見ながら、茶化したように言う。

その言葉に私は何て返したらいいか分からなかった。

「歩、点滴がもう少しで終わるの。そしたら私は帰るわね。午後からも診療があるし、今の時期インフルが流行ってるから、結構混んでるのよ。」

「お忙しいところすみません。ありがとうございました。」

お礼だけ言って、再び手を動かし始めた。

「学校、休んだんだって?」

その言葉にピッタリと手が止まった。

水が流れる音だけがやけに部屋に響いた。

「優美ちゃんの気持ちも分かるわ。あんな様子じゃ、とても心配でおいていけないわよね。」

「ここ数年は落ち着いてたんだけどな‥。」

愛お姉ちゃんが水を止めた。

それはどういう意味なんだろうか。

こういうことが前からあったってこと?

「あの、それは‥」

「歩がごめんね。」

私の言葉は遮られ、逆に謝られてしまう。

「いいえ。」

そう言って首を横にふるしかなかった。
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