笑顔の裏側に
「確かに私には分からないわよ。」

急に声のトーンを落ち着かせた愛ねえに驚いた。

何だよ、結局分かんないじゃねーか。

心の中で悪態をつきながら、次の言葉を待った。

「だけど、優美ちゃんは!あんたよりもずっと、世間的なしがらみから自分で上手く抜け出して、大切なあんたを支えようと、守ろうとしているのに‥。何であんたはそれを踏みにじるようなことするのよ!」

優美の気持ちを踏みにじるって何だよ。

俺だって優美のことを思って‥。

「どう言う意味だよ?あいつだって教師と生徒だってこと、気にしてるだろーが!」

外を歩けば、コートのフードや帽子を被る。

マスクやサングラスを付けてくる時だってある。

あまり外出したがらない。

すぐに思いつくものだけでも、十分すぎるほど、教師と生徒という根底の関係に気を遣っているじゃないか。

黙ってしまった愛ねえに焦りを感じて、言葉を続けた。

「どこか行きたいとわがままも言わない。あんまり外出したがらない。家に来る時も外出する時もいつだって顔を隠す。これのどこが!教師と生徒というしがらみから抜け出してるっていうんだよ!」

俺の言葉に愛ねえが大きく息を吸った。

それを見てゴクリと喉を鳴らす。
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