笑顔の裏側に
だからこそ、その気持ちに答えようと思った。

今できることは、優美の優しさを素直に受け取ること。

俺は紙に書いてあった通りに、小さな鍋を火にかけた。

そしてお椀によそうこともせず、鍋のままスプーンで掬って口に運んだ。

卵のまろやかさがお粥全体を優しい味に仕上げている。

荒んだ心にジーンと染み渡る。

一口口に運ぶごとに涙が溢れた。

一度崩壊した涙腺は、止まることを知らないかのようにボロボロと零れ落ちる。

途中から味なんて分からなかった。

涙を拭うこともせず、ただ口に運んでいく。

全部食べ終わってもなお、涙はまだ流れていた。

ゆっくりと深呼吸を繰り返せば、次第に心は落ち着いていく。

乱暴に服で涙を拭って、立ち上がった。

鍋を片付けて、シャワーを浴びる。

熱があるせいか、寒気を感じたけど、数日ぶりのシャワーは気持ちよかった。

いつもは面倒でしないドライヤーも今日はちゃんとかける。

そしてベットに横になれば、瞼は重くなり自然と閉じていった。
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