笑顔の裏側に
「今のままじゃ、私は先生を安心させてあげられてない。先生が何を考えて、何に苦しんでいるのか私には分かりません。だけどもし1人で抱えきれないものがあるなら、私にも背負わせてください。先生の悲しみも苦しみも全部、一緒に乗り越えていきたいんです。」

そんな風に考えてくれていたなんて全然知らなかった。

真っ直ぐな瞳に優美の覚悟が感じ取れる。

「無理矢理話してもらおうとは思っていません。そんなこと絶対にしたくない。だけど何も分からないままじゃ、先生が本当にしてほしいことを私はしてあげられない。だから‥」

思わず手を引いて優美を抱きしめた。

これ以上聞いていられなかった。

俺の言動がこんなにも優美を悩ませて追い詰めていたなんて。

一度腕を緩めて、ゆっくりと優美の顔を見た。

涙で濡れた頰を優しく丁寧に拭っていく。

一体、俺の知らないところでどれほど泣かせたのだろう。

「もういいんだ。お前のその気持ちだけで十分なんだよ。」

「でも‥」

言葉を紡ごうとする優美を遮った。

今度こそお前の気持ちにちゃんと応えたい。

「いいから、俺の話を聞いて。全部話すから。」

「無理しないでください。」

それでも優美は引かなかった。

「本当に無理なんかしてない。落ち着いたらちゃんと話さなくちゃいけないことは分かってた。優美が背中を押してくれたんだ。だからお前は躊躇わず俺の話を聞いてほしい。」

真っ直ぐ瞳を見て、なだめるように、かつ力強く想いを乗せて言葉にする。

その言葉が届いたのか、優美は俺の瞳を見てじっとしていた。
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