笑顔の裏側に
「実はな、俺は毎年11月くらいから12月にかけて、精神的に不安定になるんだ。寝つきも悪くなって、眠れてもすぐに起きちまう。だから今回のように体調を崩すことも多いんだ。」

最近は落ち着いていたということは伏せておいた。

今年ひどかった理由は凡そ検討がついていたから。

「お前にもたくさん迷惑かけたな。だけどお前がいてくれなかったら、俺はもっとボロボロになっていたと思う。」

優美がずっとそばにいてくれたから。

俺以上に俺の体調を気遣ってくれたから。

だから一昨日まで持ち堪えたのだと思う。

学校へ行けば、優美に会える。

そう思えば、どんなに重い体でも仕事に行く気力が持てた。

大きく深呼吸を繰り返した。

心臓が早鐘を打つ。

優美は俺の手をギュッと握ってくれた。

それはまるでゆっくりでいいと言ってくれているようで。

俺はその手を握り返して、重い口を開いた。

「来週の金曜日。要の命日なんだ。」

優美が短く息を吸い込んだのが分かった。

先ほどより強い力が俺の手に伝わる。

「俺は今だに引き摺っていて‥自分のそばから大切な人がいなくなるのが怖くてたまらないんだ。」

最後の方は声が震えた。

全身が不安と恐怖に飲み込まれそうになった

その瞬間、ふんわりと柔らかな優しい温もりが俺を包み込んだ。
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