笑顔の裏側に
「どうして先生は、教師と生徒という見えない壁を作って、私を突き放そうとするんですか?」
再び優美が声を荒げた。

「別にそんなつもりは‥」

言っている意味が分からず、困惑した。

愛ねえもお前も何なんだよ。

「私は先生を教師だから好きになったわけじゃありません。私は教師としてではなくて、恋人として、彼女を持つ普通の男性として、接してほしいのに。近づこうとすれば、教師を持ち出して遠ざける。どうして一定の距離感を保とうとするんですか?」

何を言っているんだ?

これまでだって恋人として接してきているだろ?

何度も抱き合ってキスして。

それなのに何が不満なんだよ。

「それはお前だって同じだろうが!」

前々から思っていたことを俺に口にした。

「ッ‥私のどこが同じだって言うですか!」

怒りを露わにした優美が一段と声を荒げた。

「お前だって俺たちが教師と生徒だってこと隠そうとしてるだろ!」

その一言で空気がピリッと凍った気がした。

優美が黙りこくる。

「違う‥」

「え?」

小さな声で呟くように言った優美の声は俺の耳には届かなかった。

「違う!私が教師と生徒の関係を隠そうとするのと、先生が教師として私を遠ざけるのでは、全然意味が違う!」

「何が違うんだよ!」

優美の言葉の意味が分からずつい怒鳴ってしまう。
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