笑顔の裏側に
俺が考えていたことがいかに軽薄で、所詮目の前のことしか見えていなかったのだとひしひしと痛感させられる。

俺はただ優美のことが一番大切だった。

だから俺はそのためならどうなっても構わないと思っていた。

だけどそれじゃダメだったんだな。

俺を盾にして自分が犠牲になるようにすれば優美を守ることはできる。

だけどそれじゃ、2人の未来に繋がることはない。

そのためには自分自身も守ること。

それが結果として相手を守ることになるのだと教えられた気がした。

「悪かった。そんな風にお前が考えてくれるなんて知らなかった。間違っていたのは俺の方だったな。」

「私の方こそ勝手なことして、生意気ばかり言ってごめんなさい。厚かましいですよね、ほんと‥」

俯いて涙を堪える優美を自分の胸に押し当てるようにして抱きしめた。

「俺は嬉しかったよ。ちゃんと言ってくれてありがとう。」

そう言えば、腕の中から嗚咽が聞こえてくる。

俺は優美にどれだけの苦悩を与えてきたんだろう。

本来なら2人で考えていかなきゃいけないことだったのに。

俺は目の前の自分のことばかりで、先のことなんて何一つ見ようとしてこなかった。

そのせいでこんなに大きなものを優美1人に押し付ける形になってしまって本当に不甲斐ない。

俺はただひたすら優美が泣き止むまで、背中を撫で続けるしかできなかった。

泣き疲れたせいだろう。

いや俺の看病疲れもあるかもしれない。

今日1日でどれくらい泣かせてしまったのだろうか。

俺の腕の中で眠る優美をそっとベットに寝かし、まだ涙に濡れる目の淵にそっと触れる。

なんか今日1日で色々なことを気付かされた気がする。
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