笑顔の裏側に
「愛ねえは気づいてたんだな。俺は何も知らなかったよ。聞いてたから分かるとは思うけど、あいつの言動がまさか、俺との未来を見据えてのものだったなんて俺は知りもしなかった。」

「そうね。」

そう言ったきり愛ねえは黙ってしまった。

コップからほんのりと立ち昇る湯気を見つめながら、何か考えているような素振りだった。

「あのさ‥あんたに言おうか迷ったんだけど‥」

「何だよ、改まって‥」

俺がおどけるようにそう言っても愛ねえの表情は硬いままだった。

「やっぱりあんたもちゃんと知っておいた方がいいと思うから。優美ちゃんには口止めされてたんだけど‥」

その言葉からして嫌な予感がした。

俺には秘密にしてほしいということは、きっと良くないことに違いない。

相談できなくさせてしまったのは、またしても俺のせいだと思わずにはいられなかった。

「こないだね、優美ちゃんから電話があったの。あ、あんたを休ませるためにかかってきた朝のとは別よ?」

「それで何の用だったんだよ。」

はやる気持ちを抑えて、何とか冷静を装う。

「優美ちゃんには絶対に秘密よ。」

そう前置きをして、一息ついてから、次の言葉を紡いだ。
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