笑顔の裏側に
第5章 脆くも揺るぎない笑顔

消えない傷跡

優美side

目が覚めたのは、辺りが明るくなってからだった。

慌てて飛び起きる。

隣を見れば、先生が穏やかな顔で眠っていた。

昨日のことを寝起きの頭で必死に思い出す。

そうだ、確か私は先生に色々とぶちまけて‥

それでそのまま寝ちゃった!?

私としたことがなんて事を‥

昨日のことを思い出して、項垂れる。

ていうか今何時?

パーカーのポケットから携帯を出す。

すると、8時を回ったところだった。

随分と寝ちゃっていたみたいだ。

そういえば、あれから愛お姉ちゃんはどうしたんだろうか。

私を呼びに来た後、あのまま帰っちゃったのかな。

リビングに行こうという考えが一瞬頭をよぎったが、すぐにその考えは消し去った。

先生をまだ1人にさせるのは危険だ。

昨日聞いた話に驚かなかったと言ったら嘘になる。

だけどそれによってこれまでの先生の言動に納得がいくのも確かだった。

その訳を知った今、いくらほんの少しの時間だとしても緊急時以外は先生のそばから離れることは躊躇われた。

先生の首と額に手を当てれば、熱は下がったように感じる。

医者から処方された薬が効いたのだろう。

これで一安心かな。

後は心の安定だけ。

来週の金曜日が命日と言っていたけど、例年どれくらいで落ち着くのだろうか。

月曜日からはまた学校が始まり、先生とずっと一緒にはいられない。

それに木下さんのこともあるから、出来るだけ学校内では極力2人きりになりたくなかった。

でも先生の心が落ち着くまでは、そうも言ってられない。

どうにかしなきゃと思いつつも、具体的な案は思いつかず、堂々巡りを繰り返していた。

ただ一刻も早く、先生の心が落ち着きを取り戻すことを願うばかりだった。
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